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備忘録(権利能力なき社団、認可地縁団体)

【登記先例等】

①AからBに相続による所有権移転登記のされた不動産について、BからA死亡後に認可された地縁団体Cに「委任の終了」を原因とする登記申請があった場合、受理できる。(浦和地方法務局権利登記官等打合せ会における協議事項(平成7年7月24日開催)

 

②地縁団体の代表者A個人の名義で所有権等の登記後、A名義から相続人Bへ相続を原因とする所有権移転の登記がされている不動産については、通常であれば、当該不動産の所有権等の権利者は地縁団体であるので、その代表者の相続人が相続財産として取得することはありえないので、その相続の登記を抹消した後でなければ、認可地縁団体への所有権等の移転の登記はできないものと思われる」(登記先例解説集No.371

 

③法人格を取得した地縁団体への「委任の終了」を原因とする所有権移転の登記を申請する場合において、その不動産につき、法人格取得前の地縁団体の代表者名義からその相続人への相続の登記がされているときであっても、その代表者の固有財産となった後、相続が開始し、その相続人から当該地縁団体への権利の移転があったものである限り、相続登記を抹消することなく、その登記を申請することができる。

(登記研究H3年6月 521号168頁以下(H3.4.2民三第2246号民事局長通達に関する解説)、登記研究577.61、登記研究577.65 民亊月報46.4.167

 

代表者の個人名義で所有権の登記がされている不動産につき、代表者の死亡後に社団が地方自治法第260条の2第1項の認可を受けた場合、現在の登記名義人の相続人全員を登記義務者、登記原因を「委任の終了」、その日付を認可の日として、直接認可地縁団体へ所有権移転の登記を申請できる。
(登記研究 第675号109頁)

 

個人A名義に登記後、死亡による相続人B名義に所有権移転登記がされている場合、もともと法人格のない地縁団体代表者A名義で登記されたのであれば、相続の登記を抹消しなければならないが、相続人Bが法人格のない地縁団体(代表者B)に贈与・売買したときには、所有者を個人Bから法人格のない地縁団体代表者Bとする登記手続きは現行法上存在しないので、登記記録上の所有者B名義から法人格取得後の地縁団体○○町内会(代表者C)名義への所有権移転登記の申請は認めざるをえないものと考える。((「登記研究」第521号168頁参照)

 

1 相続による所有権移転登記の抹消登記は,被相続人を登記権利者(実際には真実の相続人が申請する),相続登記の名義人を登記義務者として共同で申請する (登記研究333号70頁)(司法書士先例マスター不動産登記207頁)

 

2 相続登記の抹消登記において,登記権利者(の承継人)として申請する真実の相続人が数人いるときは,そのうちの一人が共有物の保存行為(民252但)と して,登記義務者とともに抹消登記を申請することができる(登記研究427号 99頁)(同マスター207頁)

 

3 コメントとして「相続登記の名義人が単独で申請することができない」(同マスター207頁)という記載もある。

 

【考察】

地縁団体名義への所有権移転登記手続きの改善促進(総評相第31号/平成25年2月15日)に基づき、地方自治法が一部改正され、認可を受けた地縁団体名義への所有権の移転の登記手続を促進する特例(法第260条の38,第260条の39)が設けられた(施行期日 平成27年4月1日)。この特例は、認可地縁団体所有の不動産につき、現在の登記名義人又はその相続人の一部または全部の所在が知れない場合に、所定の要件を満たせば、市町村の発行する証明書が発行されそれをもとに、不動産登記法第60条の規定にかかわらず、認可地縁団体名義に所有権移転登記をすることができるというものである。この特例を逆に見れば、不登法第60条に基づき、現在の登記名義人又はその相続人の全部が登記申請に関与するのであれば、現在の登記名義人又はその相続人全員から認可地縁団体への所有権移転登記が可能であると考えることもできる。

 

認可地縁団体の申請には、事前に総会において、規約の制定・改訂についても決議される。規約には団体が所有する財産に関する項目があり、それを含めて決議されるこということは、団体構成員が、本件不動産を個人所有ではなく団体の所有するものであると確認したことを意味し、認可地縁団体が真実の所有者であることが担保されると考えられる。

また、現在の登記名義人又はその相続人全員が団体への所有権移転登記申請に関与すれば、その財産権を侵害することがないと考えられる。

 

【地方自治法】

第二百六十条の三十八  

認可地縁団体が所有する不動産であって表題部所有者(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する表題部所有者をいう。以下この項において同じ。)又は所有権の登記名義人の全てが当該認可地縁団体の構成員又はかつて当該認可地縁団体の構成員であつた者であるもの(当該認可地縁団体によって、十年以上所有の意思をもつて平穏かつ公然と占有されているものに限る。)について、当該不動産の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人(以下この条において「登記関係者」という。)の全部又は一部の所在が知れない場合において、当該認可地縁団体が当該認可地縁団体を登記名義人とする当該不動産の所有権の保存又は移転の登記をしようとするときは、当該認可地縁団体は、総務省令で定めるところにより、当該不動産に係る次項の公告を求める旨を市町村長に申請することができる。この場合において、当該申請を行う認可地縁団体は、次の各号に掲げる事項を疎明するに足りる資料を添付しなければならない。
一  当該認可地縁団体が当該不動産を所有していること。
二  当該認可地縁団体が当該不動産を十年以上所有の意思をもつて平穏かつ公然と占有

していること。
三  当該不動産の表題部所有者又は所有権の登記名義人の全てが当該認可地縁団体の構

成員又はかつて当該認可地縁団体の構成員であつた者であること。
四  当該不動産の登記関係者の全部又は一部の所在が知れないこと。
②  市町村長は、前項の申請を受けた場合において、当該申請を相当と認めるときは、総務省令で定めるところにより、当該申請を行った認可地縁団体が同項に規定する不動産の所有権の保存又は移転の登記をすることについて異議のある当該不動産の登記関係者又は当該不動産の所有権を有することを疎明する者(次項から第五項までにおいて「登記関係者等」という。)は、当該市町村長に対し異議を述べるべき旨を公告するものとする。この場合において、公告の期間は、三月を下つてはならない。
③  前項の公告に係る登記関係者等が同項の期間内に同項の異議を述べなかつたときは、第一項に規定する不動産の所有権の保存又は移転の登記をすることについて当該公告に係る登記関係者の承諾があつたものとみなす。
④  市町村長は、前項の規定により第一項に規定する不動産の所有権の保存又は移転の登記をすることについて登記関係者の承諾があつたものとみなされた場合には、総務省令で定めるところにより、当該市町村長が第二項の規定による公告をしたこと及び登記関係者等が同項の期間内に異議を述べなかつたことを証する情報を第一項の規定により申請を行った認可地縁団体に提供するものとする。
⑤  第二項の公告に係る登記関係者等が同項の期間内に同項の異議を述べたときは、市町村長は、総務省令で定めるところにより、その旨及びその内容を第一項の規定により申請を行った認可地縁団体に通知するものとする。
 

第二百六十条の三十九  

不動産登記法第七十四条第一項の規定にかかわらず、前条第四項に規定する証する情報を提供された認可地縁団体が申請情報(同法第十八条に規定する申請情報をいう。次項において同じ。)と併せて当該証する情報を登記所に提供するときは、当該認可地縁団体が当該証する情報に係る前条第一項に規定する不動産の所有権の保存の登記を申請することができる。
②  不動産登記法第六十条の規定にかかわらず、前条第四項に規定する証する情報を提供された認可地縁団体が申請情報と併せて当該証する情報を登記所に提供するときは、当該認可地縁団体のみで当該証する情報に係る同条第一項に規定する不動産の所有権の移転の登記を申請することができる。

2017.09.06

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